Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.831 Zeichen · 396 Bildschirme
自分たちの組屋敷まではもう二、三丁に過ぎないので、ふたりは別に不安を感じることも無しに、片手に提灯を持ち、片袖は胸にあてて、少し俯向いて、足を早めて来た。
坂を降りると、右側は二、三軒の屋敷と町屋で、そのあいだには寺もある。左側は殆どみな寺である。屋敷は勿論、町屋も四ツ過ぎには表の戸を閉めているので、寺町ともいうべき此の大通りは取り分けて寂しかった。春とは云っても正月なかばの暗い夜で、雪でも降り出しそうな寒い風がひゅうひゅう吹く。二人はいよいよ俯向き勝ちに急いで来ると、お北は何を見たか、俄かに立ち停まった。
「あら、なんでしょう」
お勝も提灯をあげて透かして見ると、ふたりの行くさきに一つの白い影が舞っているのである。更によく見ると、それは白い蝶である。普通に見る物よりやや大きいが、たしかに蝶に相違なかった。蝶は白い翅をひるがえして、寒い風のなかを低く舞って行くのであった。二人は顔を見あわせた。
「蝶々でしょう」と、お勝はささやいた。
「それだからおかしいと思うの」と、お北も小声で云った。「今頃どうして蝶々が飛んでいるのでしょう」
時は正月、殊にこの暗い夜ふけに蝶の白い形を見たのであるから、娘たちが怪しむのも無理はなかった。