Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.831 Zeichen · 396 Bildschirme
唯きこえるのは風の音ばかりである。
長三郎はあても無しに其処らを一巡して、坂の上まで戻って来ると、だんだんに更けてゆく夜の寒さが身に沁み渡った。
「小父さんも待っているだろう」
もうこのくらいで引っ返してもよかろうと思って、長三郎は坂を降りた。もとの寺門前へ来かかった時に、彼は俄かに立ちどまって、口のうちであっと叫んだ。大きい白い蝶が闇のなかにひらひらと飛んでゆくのを見たのである。彼は眼を据えて、その行くえを見定めようとする間に、怪しい蝶の影は忽ち消えるように隠れてしまった。
早くそれを小父さんに報告しようと、彼は足早に門前へ進み寄ったが、そこに伝兵衛のすがたは見いだされなかった。わたしの帰りの遅いのを待ちかねて、小父さんもどこへか出て行ったのかと、長三郎は暗い門前を見まわしているうちに、その足は何物にかつまずいた。それが人であるようにも思われたので、彼はひざまずいて探ってみると、それは確かに人であった。しかも大小をさしていた。
長三郎ははっと思って慌てて其の人をかかえ起こした。
「小父さんですか。黒沼の小父さん。……小父さん」
人はなんとも答えなかった。