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Japanische Klassiker mit Furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 217.272 Zeichen · 434 Bildschirme

Aozora Bunko

夜は蚊責めと覚悟しなけりゃあならねえ」と、半七は云った。「まあ、我慢しろ。蚊ばかりじゃあねえ、今に化け物が出るだろう」

蚊の声、虫の声、古寺の闇はいよいよ深くなって屋根の上を五位鷺が鳴いて通った。二人は根気よく坐り込んで、夜のふけるのを待っていたが、やがて四ツ(午後十時)に近い頃までも彼らを驚かすような化け物は出なかった。松吉は少し待ちくたびれたようにささやいた。

「親分。化け物はまだ来ねえかね」

「秋の夜は長げえ。化け物の来るのは丑満と決まっていらあ」

「まったく秋の夜は長げえ。ここらで一服吸ってもいいかね」

「いけねえ。燧石の火は禁物だ」

「いやに暗い晩だね」

「暗いから火は禁物だというのだ」

その暗い夜を照らすような稲妻が、軒さきを掠めて弱く光った。稲妻は秋の癖である。それは不思議でもなかったが、別に半七らをおどろかしたのは、二人が控えている本堂の庭さきに一人の女がたたずんでいる事であった。女は縁に近寄って、首をのばして内を窺っているらしく、稲妻に照らされた顔は蒼白く見られた。

いつの間に忍んで来たのか知らないが、自分らの眼のさきに怪しい女の顔がだしぬけに浮き出したので、二人とも思わずぎょっとする間もなく、稲妻は消えて元の闇となった。