Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 217.272 Zeichen · 434 Bildschirme
そういう鯉のたくさん泳いでいるのを見ていながら、御留川だから誰もどうすることも出来ない。しかしいつの代にも横着者は絶えないもので、その禁断を承知しながら時々に阿漕の平次をきめる奴がある。この話もそれから起ったのです」
文久三年の五月なかばである。毎日降りつづく五月雨もきょうは夕方からめずらしく小歇みになったが、星ひとつ見えない暗い夜に、牛込無量寺門前の小さい草履屋の門をたたく者があった。無量寺門前というのは今日の築土八幡町である。このごろは雨つづきで草履屋の商売も休みも同様であるばかりか、亭主の藤吉は宵から出ているので、女房のお徳は店を早く閉めて、奥の長火鉢の前で浴衣の縫い直しをしている時、表の戸をそっと叩く音がきこえたので、お徳は針の手をやめて顔をあげた。今夜ももう四ツ(午後十時)に近い。この夜ふけに買物でもあるまい。おそらく道をきく人ででもあろうかと思ったので、かれは坐ったままで声をかけた。
「はい。なんでございます」
外では又そっと叩いた。
「どなたですえ。お買物ですか」と、お徳はまた訊いた。
「ごめん下さい」と、外では低い声で云った。
なんだか判らないので、お徳もよんどころなしに起ちあがった。