Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 217.272 Zeichen · 434 Bildschirme
左内は「おれを呼ぶのは誰だ、何者だ。ここへ出て来い」と呶鳴り返したが、声はそれには答えないで、左内の名を呼びつづけるのである。左内は焦れて、その声を追ってゆくと、さらにまた違ったが方角で「岩下左内やあい」と呼ぶのである。
喜平次と伊太郎は気味が悪くなって来た。世間で噂する通り、その声が普通の人間とは違っているばかりか、近いような、遠いような、悲しんで泣くような、嘲って笑うような、判断に苦しむ此の声の主は何物であろう。もし人間ならば足音がきこえる筈であるのに、それが或いは前に、あるいは右に、音も無しに移動するのも不思議である。そう思うと、二人は何となく怯気が付いて、足の進みもおのずと鈍って来たが、左内は頓着なしにその声を追って行った。怪しい声は嘲るように斯う云った。
「貴様たちに正体を見とどけられるような俺だと思うか。おれはここらに年経る白狐だぞ」
「畜生、よく名乗った。この古狐め」
左内は刀をぬいてまっしぐらに追ってゆくと、声はそれっきりで絶えた。左内の足音もやがて聞えなくなった。師匠を見失っては申し訳がないと、喜平次と伊太郎はふたたび勇気を振い起して、つづいて其のあとを追って行ったが、左内の姿は闇に埋められてしまった。