Japanische Klassiker mit Furigana
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じかん
時間
横光 利一
Lesen Sie 時間 (じかん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.473 Zeichen · 32 Bildschirme
なければ咳の声さえしなくなって、みな誰も彼も一様にこれはもう暫くたてばどんなになるのかと恐怖に迫られ出した沈黙が、手にとるようにはっきりと感じられて来た。そうこうしているうちにまた病人の出血が激しくなって、男達の脱いだ襦袢を崖の頂きで海に向って取り替えるやら背負う番を変えるやら、前のように気の毒がって激しく泣き出す病人の声と一緒にひと際一団のものが賑やかに立ち返ると、また食べ物の話が出る。そんなに食べ物の話をしては食べたくなるばかりだからやめてくれというものがあると、いやもうせめて食べ物の話でもしてくれなければ食べた気がしないというものがあり、水でも良いから飲めないものかといいながら傘から滴り落ちる雨の滴を舐め出したり、小さな松の木でもあると松の葉をむしって食べながら歩いたり、まるで餓鬼そのままの姿となってしまって笑うにも笑えない。私も私で着物はもう余すところなくびっしょり濡れたうえに咽喉がからからになって来て、雨が吹きつけて来ると却って傘から顔を脱して雨に向って口を開けたり松葉を噛んだりし続けた。それがまた八人の男が一巡病人を背負ってしまって私の番が廻ってくると、どんなに背中の上のものを女だと思おうとしたって、その空腹では歩く力だけでもやっとのことだ。