Japanische Klassiker mit Furigana
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じかん
時間
横光 利一
Lesen Sie 時間 (じかん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.473 Zeichen · 32 Bildschirme
て落ち込んでいくので、私も絶えず殴り続けているものの同時に十一人の動作を見詰めつづけている間にはふっとどうしたものやらまた私の意識も極りなき快楽の中へ溶け込んでいってうつらうつらと漂い出すのだ。快楽――まことに死の前の快楽ほど奥床しくも華かで玲瓏としているものはないであろう。まるで心は水々しい果汁を舐めるがように感極まってむせび出すのだから、われを忘れるなどという物優しいものではない。天空のように快活な気体の中で油然と入れ変り立ち変り現れる色彩の波はあれはいったい生と死の間の何物なのであろう。あれこそはまだ人々の誰もが見たこともない時間という恐るべき怪物の面貌ではないのであろうか。――しかし、私は私が死んでしまってなくなれば同時に誰も彼もの全世界の人間が私と一緒に消えてなくなってしまうのだと思うと愉快であった。ひとつみんなの人間を殺してやろうか、とふと思うこの死との戯れがときどき私を誘惑してひと思いに眠ってしまおうと思うに拘わらず、またいつの間にか私の前で皆が眠り出すと私は両手で所かまわず殴りつけているのである。人を死なすまいと努力すること――この有害なことが何故に人々にとって有益なのであろうか。