Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ばんしゅう

晩秋

山本 周五郎

Lesen Sie 晩秋 (ばんしゅう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.792 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

或るとき都留が夕食を運んでゆくと、主計は障子の側へすり寄って針に糸を通そうとしていた、黄昏のことだし老人の眼にはむつかしいらしく、なかなか糸は通らなかった。暗くなった光りのなかで、肩を縮め眼をしかめながら、けんめいに針の穴をさぐっている小柄な痩せた老人の姿は、いかにも孤独でさびしいものだった。……そのとき都留は主計がその年までいちども結婚したことがなく、ずっと独身で通して来たということを思いだした、曾て養子を入れたこともあるが、数年のちに離別してしまい、現在では跡を継ぐべき者もないという。

――この方はいつもこのようにして、自分で縫い繕いまでなすって来たのだろうか。

都留は老人の孤独な姿に心をうたれた、それでしずかに側へ寄りながら、「わたくしがお通し致しましょう」と云い、主計の手から糸と針を取った。主計は苦笑しながら、「……此の頃は昏れるのが早いから」と呟きごえで云い訳をするように云った。それはよわよわしく、たよりなげな、云いようもなくたよりなげな調子だった。都留の心にそのとき「懐剣」があっただろうか、否、……かの女は主計の寂しい孤独な姿を憐れむおもいのほか、なにものもなかったことを覚えている。