Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんきく
晩菊
林 芙美子
Lesen Sie 晩菊 (ばんきく) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.998 Zeichen · 32 Bildschirme
むっくりと昔のように盛りあがった肥りかたではなく、細い静脈の毛管が浮き立っている。只、そう痩せてもいないと云うことが心やすめにはなる。ぴっちりと太股が合っている。風呂では、きんは、きまって、きちんと坐った太股の窪みへ湯をそそぎこんでみるのであった。湯は、太股の溝へじっと溜っている。吻っとしたやすらぎがきんの老いを慰めてくれた。まだ、男は出来る。それだけが人生の力頼みのような気がした。きんは、股を開いて、そっと、内股の肌を人ごとのようになでてみる。すべすべとして油になじんだ鹿皮のような柔らかさがある。西鶴の「諸国を見しるは伊勢物語」のなかに、伊勢の見物のなかに、三味を弾くおすぎ、たま、と云う二人の美しい女がいて、三味を弾き鳴らす女の前に、真紅の網を張りめぐらせて、その網の目から二人の女の貌をねらっては銭を投げる遊びがあったと云うのを、きんは思い出して、紅の網を張ったと云う、その錦絵のような美しさが、いまの自分にはもう遠い過去の事になり果てたような気がしてならなかった。若い頃は骨身に沁みて金慾に目が暮れていたものだけれども、年を取るにつれて、しかも、ひどい戦争の波をくぐり抜けてみると、きんは、男のない生活は空虚で頼りない気がしてならない。