Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんきく
晩菊
林 芙美子
Lesen Sie 晩菊 (ばんきく) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.998 Zeichen · 32 Bildschirme
きんは田部の後姿に予感を受け取り、心のうちでふふんと軽蔑してやる。この戦争ですべての人間の心の環境ががらりと変ったのだ。きんは、茶棚からヒロポンの粒を出して素早く飲んだ。ウイスキーはまだ三分の一は残っている。これをみんな飲ませて、泥のように眠らせて、明日は追い返してやる。自分だけは眠っていられないのだ。よく熾った火鉢の青い炎の上に、田部の若かりし頃の写真をくべた。もうもうと煙が立ちのぼる。物の焼ける匂いが四囲にこもる。女中のきぬがそっと開いている襖からのぞいた。きんは笑いながら手真似で、客間に蒲団を敷くように云いつけた。紙の焼ける匂いを消す為に、きんは薄く切ったチーズの一切れを火にくべた。「わア、何焼いてるの」厠から戻って来た田部が女中の豊かな肩に手をかけて襖からのぞき込んだ。「チーズを焼いて食べたらどンな味かと思って、火箸でつまんだら火におっことしちまったのよ」白い煙の中に、まっすぐな黒い煙がすっと立ちのぼっている。電気の円い硝子笠が、雲の中に浮いた月のように見えた。あぶらの焼ける匂いが鼻につく。きんは、煙にむせて、四囲の障子や襖を荒々しく開けてまわった。