Japanische Klassiker mit Furigana
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ちえこのはんしょう
智恵子の半生
高村 光太郎
Lesen Sie 智恵子の半生 (ちえこのはんしょう) von 高村 光太郎 (たかむらこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.697 Zeichen · 25 Bildschirme
私は彼女を家に一人残して二週間と旅行をつづけた事はなかったのに、此の時は一箇月近く歩いた。不在中泊りに来ていた姪や、又訪ねて来た母などの話をきくと余程孤独を感じていた様子で、母に、あたし死ぬわ、と言った事があるという。丁度更年期に接している年齢であった。翌七年はロザンゼルスでオリムピックのあった年であるが、その七月十五日の朝、彼女は眠から覚めなかった。前夜十二時過にアダリンを服用したと見え、粉末二五瓦入の瓶が空になっていた。彼女は童女のように円く肥って眼をつぶり口を閉じ、寝台の上に仰臥したままいくら呼んでも揺っても眠っていた。呼吸もあり、体温は中々高い。すぐ医者に来てもらって解毒の手当し、医者から一応警察に届け、九段坂病院に入れた。遺書が出たが、其にはただ私への愛と感謝の言葉と、父への謝罪とが書いてあるだけだった。その文章には少しも頭脳不調の痕跡は見られなかった。一箇月の療養と看護とで平復退院。それから一箇年間は割に健康で過したが、そのうち種々な脳の故障が起るのに気づき、旅行でもしたらと思って東北地方の温泉まわりを一緒にしたが、上野駅に帰着した時は出発した時よりも悪化していた。