Japanische Klassiker mit Furigana
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こよみ
暦
壺井 栄
Lesen Sie 暦 (こよみ) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.332 Zeichen · 112 Bildschirme
いねは自分の奥心をかき開いてみた。そうかもしれないと思う。またいね自身も八重がいつまでも独身で通せないように思い、よい相手がないものかと考えたこともなくはない。それなら、今、この反対しようとする気持は何であろう。八重の経済力への欲ばかりなのか。そういうことはあるかもしれないが捨てなければならないことは分っている。いつか、アグリやカヤノの例があるから、お前たちは好きな所へ嫁けと、いっぱし理解のあるような新しい言葉を吐いたことが今は針になっていねの心をつく。静かなように見えた八重の青春をかきたてる相手が現れたことは、どう考えても困ったこととより思えない。せっかく平静になった日向の家にまた何かことが起りそうな予感に、いねはおののくのであった。
「八重、ばかなことをせんとくれよ」
いねは手紙に向ってつぶやいた。膝の上で折りたたんだ手紙を左手に押えさせておいて、右手で封筒を被せようとした。白い封筒は紙がささくれ、ぐるりがくしゃくしゃになっていた。八重が何日も懐の中に入れて考えあぐんだ末のことであろうと覚らされ、いねは瞬間に自分の気持が不可抗な力で決められてゆくように思えた。