Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
こよみ
暦
壺井 栄
Lesen Sie 暦 (こよみ) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.332 Zeichen · 112 Bildschirme
今自分の枕元に坐り、何かいい分があるのをいえずにいるのがいねにはその顔色で読みとれた。高子が東京へ行ったと知ると、高本の母親はそれがいねの後押しででもあるように、寝ているいねの枕元へ来て、静かな笑いを湛えた落ちついた顔で、
「正昭もなあ、おかげで家とは縁を切ることになりましてな」と、まるで何か喜びごとを告げるような声でいった。いねは、うっと声をつまらせ、返す言葉もなく、相手の顔を見守ったのであった。
まだ学校を出たばかりの正昭と高子がどんな暮し方をしているか、いねには想像もつかないが、わずかの間にやせて色艶を失くしたような高子の顔は、無言でいても大きく訴えるものがある。
「汁の実は何を入れるんぞい」
いねの問いに高子は無邪気に朝夕の食べものを並べたてた。
「正昭さんは酒は好きかい」
「んんん」
首をふる高子にいねは、
「そんなら一人で淋しかろ、早う帰ね、早う帰ね」
といった。布団頼母子を落して、いね自身長い間の倹約の末、ようやくの思いで買いととのえた客用の新しい麻の蚊帳と、一組の布団を土産にもたせた。
「あらあ、嬉しいな、こんなん欲しいと思いよった」
高子は嬉々として夫のもとへ帰っていった。