Japanische Klassiker mit Furigana
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あらしのなか
暴風雨の中
山本 周五郎
Lesen Sie 暴風雨の中 (あらしのなか) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.339 Zeichen · 30 Bildschirme
顔は白っぽく乾いていた。こけた頬や骨ばった顎のあたりに、激しい疲労と弛緩の色があらわれていた。疲れきって虚脱しているようであった。なにもかも、身も心も投げだしたというふうにみえた。
「生れてきたことはよかった」こんどははっきりと呟いた、「生れてこないよりは、やっぱり生れてきたほうがよかった、飢えや、寒さや、辛い、苦しいことが多かった、そうだったか、……いつもおれは逃げだすことばかり考えていた、そしていつも逃げだした、逃げださなければもっと悪いことが起こっただろう、……こんどは逃げなかった、逃げだすことができなかった、そして、こうするほかに手はなくなった」
彼の表情が変った。風と雨の音が家を押し包んでいた。乱打する太鼓の中にでもいるように、その荒れ狂う音が部屋いっぱいに反響した。三之助の眼は憎悪の光りを帯びた。唇も憎悪のために歪んだ。しかしその表情はすぐに消え、彼は頭をゆらゆらと揺って、眼をつむった。
「おれはこの腕でおぎんを抱いた」彼はまた呟いた。「おたいやお幸や、まさ公を抱いた。抱いたり撫でたり、殴ったこともあった。……あいつらは泣いたり、噛みついたり、爪を立てたりした。