Japanische Klassiker mit Furigana
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つきかげ
月かげ
豊島 与志雄
Lesen Sie 月かげ (つきかげ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.867 Zeichen · 14 Bildschirme
助かった、という気持で私は眼を外らして、時計の方を仰いだが、その瞬間に、彼は立上って、よろよろした足取りで私の方へやって来た。
「暫くでした。」
何の奇もない普通の挨拶だった。
「暫く。」と私も機械的に応じた。
「其後如何です。」と彼は重ねて云った。
「え。」
「球は……。」
よく覚えてるな、と私は思って、ただ笑みを浮べたが、彼はもうにこにこ笑いながら、私と向合って腰を下ろしていた。
「これから二三ゲームやりに行きましょうか。」
「でも、もう一時だから。」
「そうですね。」
事もなげに答えてから、彼はまたにこにこしながら私の方をじっと見つめてきた。
私は変に気圧された心地になって、てれ隠しに煙草を吸い初めた。そこへ、お光が銚子を持ってきた。
彼女はいつにない鹿爪らしい顔をして、二三歩離れた所につっ立って、不思議そうに私達の様子を見比べた。
「まあ坐ったらいいじゃないか。」
返辞に迷ってる彼女の様子を見て、私は急に一瞬前の気まずさから脱して、却って可笑しな愉快な気分になった。
「おい杯をも一つくれよ。この人は僕の旧友だったんだ。それを今思い出したってわけなんだ。」
「杯ならありますよ。