Japanische Klassiker mit Furigana
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げっこうのした
月光の下
田中 貢太郎
Lesen Sie 月光の下 (げっこうのした) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.047 Zeichen · 5 Bildschirme
それは波にさらわれたままの紺飛白の単衣を着た女房であった。頭髪も衣類もぐっしょりと濡れていた。
「おう、帰って来たか、俺は、お前のことを、どんなに心配していたか判らないぞ、よう帰って来た」と、漁師は嬉しさに声が縺れた。
女は顔をあげて、漁師の顔を一眼見て、何も云わずにちらと悲しそうな表情を見せて、双手を膝のあたりに重ねるようにしてお辞儀をした。漁師は不思議に思って、女の手にかけようとした己の手を引込めた。と、女はそのまま歩きだして、沙丘にのぼりかけた。
「お葉、どうしたのじゃ、お葉」と漁師は驚いてその名を呼びながら、後から跟いて往った。
女は沙丘を越えて、己の家の方へ歩いて往く。漁師はその後を歩きながら、海に長くいたために体が悪くなって声が出ないので、それで急いで家へ帰って、気を落ちつけて話をするつもりだろうと思った。しかし、家は海嘯のために持って往かれたので、その跡へ仮小屋をこしらえて住んでいるから、女房は驚くだろうとも思った。
村は荒涼としていた。松林の松は倒れ、畑は河原のようになっていた。女は倒れた松の間を潜って歩いた。そして、己の家の前の方へ往ったが、その方へは曲らずにそのまま通り越してしまった。