Japanische Klassiker mit Furigana
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げつめい
月明
豊島 与志雄
Lesen Sie 月明 (げつめい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.772 Zeichen · 34 Bildschirme
何を問われても、変な夢をみるというきり黙っていた。強度の神経衰弱という名目の下に、何だか甘っぽい水薬が与えられた。
「ふん。」
鼻の先で嘲って、室の中をぐるぐる歩き廻った。それが自分でもおかしくなって、くすりと忍笑いをしていると、姉が向うの室からじっと様子を窺っていた。
「ばアー。」と冗談におどかしてやろうとしたが、それが何だか真剣になりそうな気がして、自分でも恐ろしくなった。足が悚んで動かなかった。
けれど、姉の方が妙に悚んでいた。蒼ざめた顔をして、頬の筋肉をぴくぴく震わしていた。
彼は黙ってその前を通りすぎた。
「何処へ行くの。」
帽子を取ってる時に、後ろから呼ばれた。
「一寸散歩にいってきます。」
「今日はお止しなさいよ。」そして次に哀願の調子で、「行かないで頂戴よ、つねやも居ないし、私一人だから。」
「つねは何処へ行ったんです。」
「一寸其処まで。」
帽子をまた釘にかけて、黙って自分の室へ戻ってゆき、縁側に腰をかけて、足をぶらぶらやってると、彼は急に淋しくて堪らなくなった。
「なぜかは知らねど心迷い、むかしの……。」
ふと口に出てきた歌を、何度も何度も低くくり返した。