Japanische Klassiker mit Furigana
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げっしょく
月蝕
夢野 久作
Lesen Sie 月蝕 (げっしょく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.081 Zeichen · 3 Bildschirme
…………深く斬込まれた刃の蔭に
赤茶気た肉がヒクメク。
★
世界は暗くなった。
すべての生物は鉛のように重たく
針のように痛々しい心を
ジッと抱いて動かなくなった。
★
けれども暗い……鋼鉄よりもよく切れる円形の刃は
彼女の青ざめた横頬を
なおもズンズンと斬り込んでゆく。
そこから溢れ出る暗い…………腥いにおいにすべては溺れ込んでゆく。
…………山も…………海も…………森も…………家も…………道路も…………
…………そこいらから見上げている人間たちも…………
★
その中にただ一つ残る白い光…………
彼女の額と鼻すじが
もうすこしで…………
黒い刃の蔭に蔽われそうになった。
★
空一面の夥しい星が
小さな声で囁き合って
又ヒッソリと静まった。
★
陰惨な最後の時…………
顔を蔽いつくす血の下に
観念して閉じていた白い瞼を
パッチリと彼女は見開いた。
★
案外に平気な顔で
下界の人々を流し眼に見まわした
ニッコリと笑った。
★
…………ホホホホホホホ……
これはお芝居なのよ。
……大空の影と光りの……。
だから妾は痛くも苦しくも………
……何ともないのよ…………
そうしてもうじきおしまいになるのよ。