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Japanische Klassiker mit Furigana

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こかげのえん

木蔭の椽

宮本 百合子

Lesen Sie 木蔭の椽 (こかげのえん) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.182 Zeichen · 5 Bildschirme

Aozora Bunko

汽車の中は今日のような天気では蒸すだろう。Yは神経質故、昨夜よく眠れなかった由……

「Yさん、きっと眠がって居らっしゃるよ今頃――」

読みかけて居た本など、いきなりバタリと伏せ

「眠い! 迚も眠い!」

と、駄々っ子のように急に眠たがるYの様子を思い浮べ、笑い乍ら云ったのだが、女中には気持通ぜず。彼女は、飯茶碗を胸に高く持って坐ったなり子供らしくツクン、ツクンするようにして意味なく頬笑んだ。

「お前、京都へ行ったことある?」

「いいえ、ありません」

不図彼女が箸を持って居る袖口に目が行った。私は変な、不快を覚えた。単衣の下に見えて居るレースが、私共の肌襦袢について居るのとそっくりに見える。訝しく、襟元を見ると、あたりまえに襟をつけず、深くくって細い白羽二重の縁がとってある。私共はいつもそういうのを着て居る。肌について居るものだから、いきなり、それお前の? ともきけず――人数が減り、家じゅうの空気がひどく透明で澄んで居るので、これは私の心持を曇らせた。こればかりでなく、今朝机に向ったら、硯屏の前に小さい紙くずが一つのって居た。我々が常用する丸善のアテナという封筒の屑であった。