Japanische Klassiker mit Furigana
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もくばはまわる
木馬は廻る
江戸川 乱歩
Lesen Sie 木馬は廻る (もくばはまわる) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.819 Zeichen · 20 Bildschirme
名はお冬といって、それが格二郎の、日毎の出勤を楽しくさせた所の、実を云えば、最も主要な原因であったのだ。
年齢がひどく違っている上に、彼の方にはチャンとした女房もあり、三人の子供まで出来ている、それを思えば、「色恋」の沙汰は余りに恥しく、事実また、その様な感情からではなかったのかも知れないけれど、格二郎は、毎朝、煩わしい家庭をのがれて、木馬館に出勤して、お冬の顔を一目見ると、妙に気持がはればれしくなり、口を利き合えば、青年の様に胸が躍って、年にも似合わず臆病になって、それ故に一層嬉しく、若し彼女が欠勤でもすれば、どんなに意気込んでラッパを吹いても、何かこう気が抜けた様で、あの賑かな木馬館が、妙にうそ寒く物淋しく思われるのであった。
どちらかと云えば、みすぼらしい、貧乏娘のお冬を、彼がそんな風に思う様になったのは、一つは己れの年を顧みて、そのみすぼらしい所が、却って、気安く、ふさわしく感じられもしたのであろうが、又一つには、偶然にも、彼とお冬とが同じ方角に家を持っていて、館がはねて帰る時には、いつも道連れになり、口を利き合う機会が多く、お冬の方でも、なついて来れば、彼の方でも、そんな小娘と仲をよくすることを、そう不自然に感じなくても済むという訳であった。