Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すだま

木魂

夢野 久作

Lesen Sie 木魂 (すだま) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.668 Zeichen · 46 Bildschirme

Aozora Bunko

……その中のどこにも吾児らしい声は聞こえない……どこの物蔭にも太郎らしい姿は発見されない……全く意外千万な眩ぶしさと、華やかさに満ち満ちた世界のまん中に、昔のまんまの見窄らしい彼自身の姿を、タッタ一つポツネンと発見した彼……。

……彼がその時に、どんなに奇妙な声を立てて泣き出したか……それから、どんなに正体もなく泣き濡れつつ線路の上をよろめいて、山の中の一軒屋へ帰って行ったか……そうして自分の家に帰り着くや否や、箪笥の上に飾ってある妻子の位牌の前に這いずりまわり、転がりまわりつつ、どんなに大きな声をあげて泣き崩れたか……心ゆくまで泣いては詫び、あやまっては慟哭したか……。そうして暫くしてからヤット正気付いた彼が、見る人も、聞く人も無い一軒屋の中で、そうしている自分の恰好の見っともなさを、気付き過ぎる程気付きながらも、ちっとも恥かしいと思わなかったばかりでなく、もっともっと自分を恥かしめ、苛なみ苦しめてくれ……というように、白木の位牌を二つながら抱き締めて、どんなに頬ずりをして、接吻しつつ、あこがれ歎いたことか……。

「……おお……キセ子……キセ子……俺が悪かった。