Japanische Klassiker mit Furigana
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みらいのてんさい
未来の天才
豊島 与志雄
Lesen Sie 未来の天才 (みらいのてんさい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.630 Zeichen · 38 Bildschirme
私は五百円の洋封筒と自分の小さな蝦蟇口とを、一緒に懐の中にねじ込んだ。そして、絵具や画筆やカンヴァスや、凡てを新らしく買い求めるために、青いソフト帽を眼深にかぶって家を出た。
蝦蟇口にはいれきれないほどの金を洋封筒の中に持ってるということが、妙に可笑しくてまた嬉しかった。電車の中で、自分の下に轟く車輪の響きに耳を傾けている時、馬鹿げた笑いがふと私を囚えた。頬の筋肉が自然にびくびく震えて来て、私は思わずくすりと笑った。向う側に腰掛けてる人々が、不思議そうに私を見ていた。それを見返してやると、中に一人、栄養不良らしい顔色をした中年の男が、眉根をしかめて憐っぽい瞬きをした。私は危く放笑そうとした。それをこらえるために、帽子の縁の下に顔を伏せて唇を噛んだ。後から後からと湧いてくる笑いに、頬の筋肉がぴくぴくと震えるのが、変に擽ったいようで仕方なかった。
文房堂に行って見ると、丁度ケンブリッジの絵具が沢山揃っていた。彼女を描くのに私が求めていたのも、不変色としては最も完全なこの絵具をであった。私はそのスタヂオ・チューブを、色によって二本から五本位まで、十三四種選んだ。