Japanische Klassiker mit Furigana
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ほんじょまつざかちょう
本所松坂町
尾崎 士郎
Lesen Sie 本所松坂町 (ほんじょまつざかちょう) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.622 Zeichen · 55 Bildschirme
わざと糞落ちつきに落ついて、おのぶが不承不精に出す湯呑へ、手酌でなみなみとつぎ入れた。
渓流の音が湧くように聞えてくる。河鹿の鳴く声。さやさやと鳴る笹の葉ずれの音。
「もう、お前さん、そんなに酔っとるのに、いいかげんにしといた方がいいよ」
「いやに突っかかるじゃねえか――どうせ、今夜は帰れやしねえんだ、来る早々素っ気ないことをいうなよ」
「だって、お前さん、春次郎だって、もう七つになるよ、バカなことを」
「何をバカな――おれのいっているのはお絹のはなしだぜ、ハッキリと返事をきかなきゃ帰れやしねえじゃねえか、桔梗屋の旦那はかんかんになっているんだ、あれから何日経つと思う、これじゃ、仲に入ったおれの立つ瀬がねえよ、子供の使いじゃあるめえし」
桔梗屋というのは、山麓の横須賀村に隣接する富田郷のつくり酒屋の主人である。五十はとっくにすぎているが、性来の色ごのみで、そいつが片手間に金貸稼業をはじめたのだから何をやりだすか推して知るべしである。奉公女とくると下働きの飯焚きから日傭い女にいたるまでかつて手をつけなかったためしはなく、それも大してあくどいというやり方ではないが、親切ごかしに貧乏な水呑百姓に金を貸してやっては、奉公名儀で小綺麗な娘をつぎつぎと手に入れるキッカケをつくる。