Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ほんじょまつざかちょう
本所松坂町
尾崎 士郎
Lesen Sie 本所松坂町 (ほんじょまつざかちょう) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.622 Zeichen · 55 Bildschirme
血刀をひっさげて立っている藤作の心に意識が徐々によみがえってきた。
おのぶは腰が抜けたようになって、虚ろな眼をきょとんと見ひらいたまま、ひと口も物を言わなかった。いつの間にか奥の障子もとりはずされ、すやすやと眠っている春次郎の寝姿だけが、ぼうっと藤作の視野に映った。
「藤やん」
と、腹からしぼりだすような声で叫びながら、お絹がぴったりと彼によりすがった。
「すみません、藤やん」
「仕方がねえや、おれ、今から名主さまのところまでいってくる」
彼の遠縁にあたる近藤利右衛門のことをおもいだしたのである。子供ごころにも、これで一生が終りを告げたという気持がぴったりと来た。
「絹ちゃん――おれのうちへいって、おとっつぁんによう話してやってきてくれよ」
一刻もじっとしていられぬ気持である。坂道を駈けるように下ってゆく藤作のあとからお絹が息をはずませながら追いすがる。途中で何を話したのか、どの道をどう歩いてきたのか、二人ともよくおぼえていない。いつのまにか裏山づたいに華蔵寺の墓地の前へ出ていた。
藤作の運命がどうなるかということは、お絹にも大体想像がつく。おそらく生きてふたたび会う機会はあるまい。