Japanische Klassiker mit Furigana
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おうかをよめるく
杉田久女随筆集
杉田 久女
Lesen Sie 杉田久女随筆集 (おうかをよめるく) von 杉田 久女 (すぎたひさじょ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.273 Zeichen · 33 Bildschirme
最初台湾行の命令が来た時、この病身な弟を長途の船や不便な旅路に苦しませる事の危険を父母共に案じ母は居残る事に九分九厘迄きめたのであったが信光の主治医が「御気の毒だけど坊ちゃんの御病気は内地にいらしても半年とは保つまい。万一の場合御両親共お揃いになっていらした方が」との言葉に動かされたのと、一つには父は脳病が持病で、馴れぬ熱い土地へ孤りで行ってもし突然の事でも起ってはと云う母の少からぬ心痛もあり結局母はすべてのものを擲って父の為めに新開島へ渡る事に決心したのであった。小中学校さえもない土地へ行くのである為め長兄は鹿児島の造士館へ、次兄は今迄通り沖縄の中学へ残して出立する事になった。勿論新領土行きの為め父の官職や物質上の待遇は大変よくなったわけで、大勢の男女子をかかえて一家を支えて行く上からは父母の行くべき道は苦しくともこの道を執らなくてはならなかったに違いない。私の母は非常にしっかりした行届いた婦人であったが、母たる悲しみと妻たる務めとの為めに千々に心を砕きつつあった。その苦痛は今尚お私をして記憶せしめる程深刻な苦しみであったのである。
八重山丸とか云う汽船に父母、姉、私、病弟、この五人が乗り込んで沖縄を発つ日は、この島特有の湿気と霧との多い曇り日であった。