Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とうかいどうごじゅうさんつぎ

東海道五十三次

岡本 かの子

Lesen Sie 東海道五十三次 (とうかいどうごじゅうさんつぎ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.849 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

小さい流れに板橋の架かっている橋のたもとの右側に茶店風の藁屋の前で俥は梶棒を卸した。

「はい。丸子へ参りました」

なるほど障子に名物とろろ汁、と書いてある。

「腹が減ったでしょう。ちょっと待ってらっしゃい」

そういって主人は障子を開けて中へ入った。

それは多分、四月も末か、五月に入ったとしたら、まだいくらも経たない時分と記憶する。

静岡辺は暖かいからというので私は薄着の綿入れで写生帳とコートは手に持っていた。そこら辺りにやしおの花が鮮に咲き、丸味のある丘には一面茶の木が鶯餅を並べたように萌黄の新芽で装われ、大気の中にまでほのぼのとした匂いを漂わしていた。

私たちは奥座敷といっても奈良漬色の畳にがたがた障子の嵌っている部屋で永い間とろろ汁が出来るのを待たされた。少し細目に開けた障子の隙間から畑を越して平凡な裏山が覗かれる。老鶯が鳴く。丸子の宿の名物とろろ汁の店といってももうそれを食べる人は少ないので、店はただの腰掛け飯屋になっているらしく耕地測量の一行らしい器械を携えた三四名と、表に馬を繋いだ馬子とが、消し残しの朝の電燈の下で高笑いを混えながら食事をしている。