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Japanische Klassiker mit Furigana

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びわのはな

枇杷の花

永井 荷風

Lesen Sie 枇杷の花 (びわのはな) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.769 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

わけもなく可憐な心地がしたので、あまり人の歩かないような、そして日当りのよさそうな処を択んで、わたくしはその芽ばえを移し植えた。一本の芽はしばらくにして枯れてしまったが、他の一本の芽は梅らしく、又残りの一本は枇杷であることが、その葉とその枝との形から明かになったのは二、三年過ぎてからのことであった。以前この家に住んでいた人が、青梅や枇杷の実を食べて何心なくその核を台処の窓から外へ捨てたものであろう。わたくしには兎に角卜居の紀念になるので、年々その伸び行くのを見て娯しみとしていた。

大正十二年、震災のあった年の秋、梅の若木はその時分俄に多くなった人の出入に、いつか踏み折られたまま枯れてしまったが、枇杷の芽は梅よりも伸びるのが早く、その時既に三、四尺の高さになっていた。然し震災の年から今年に至るまで月日は数えると十二年を過ぎている。わたくしは年と共にいつかこの木の事をも忘れていたが、今年梅雨の晴れた頃の、ある日である。扇骨木や檜などを植込んだ板塀に沿うて、ふと枇杷の実の黄いろく熟しているのを見付て、今更のようにまたしても月日のたつ事の早いのに驚いたのである。