Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

りんご

林檎

豊島 与志雄

Lesen Sie 林檎 (りんご) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.752 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

子供の方はいつのまにか元の席に戻って、母親へ何やら戯れかけていた。

私は彼のために、何となく気の毒な感じがした。然し彼はもう、私の存在も叔父の存在も、否子供の存在さえ、忘れはてたもののようだった。子供の方へ眼をやりもしなかった。叔父から何か云われても、ぼんやりした様子で黙っていた。私は叔父が手荷物を片付けてる間に、彼へ言葉をかけてみた。

「今朝ほどはお眠りになりましたか。」

返辞がなかった。私はまた云った。

「すぐ連絡船で向うへ渡られるのですか。」

その時彼は初めて返辞をした。然し「ええ」と答えたのか「いいえ」と答えたのか、私には聞き取れないほど低い声だったし、またどちらでもよいというほど気乗りのしない様子だった。私は張合がぬけて、もう何にも話しかけなかった。

暫くすると、彼は俄に立上って、棚のバスケットから林檎を一つ取出した。そしてその真赤なやつを、皮のままかじり初めた。さくりさくりと歯切よくやってる様子を、私は横から見守ったが、病癖が進んできたら、子供の赤い頬辺をもそんな風にかじるかも知れない、などとふと考えて、彼を憐れむ気が起ると共に、一方では、羨望に似た憎々しい気も起った。