Japanische Klassiker mit Furigana
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いなかがえり
林芙美子随筆集
林 芙美子
Lesen Sie 林芙美子随筆集 (いなかがえり) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.157 Zeichen · 118 Bildschirme
太い格子のなかは、頭と膝だけがみえる造りになっていて、真中の板戸には、ほんの眼だけみえる小窓がついていましたけれど、ここからちらと覗いた女のひとの眼の美しさに、わたしは暫くは誘われるように、その独房の前に立ちつくしていました。
透明な晴ればれした眼でした。わたしは近よって、ここだけは無作法にもその小窓から覗いてみたのですけれど、青い蒲団を重ねてある部屋のなかで、その女のひとは痩せてしぼんだような赤ん坊を背負って、小さい台の上で赤いのしをたたんでいました。その女のひとは、わたしをじっと見上げているけれど、いまにも涙のたまってきそうな、何とも云えない淋しい眼色をしていました。わたしは自分で赧くなりながらも、わたしの感傷は、何だか、ここから去るにしのびないものを感じるのです。
皮膚は少女のように清純で、ひっつめに結った髪の色も黒くて、何よりも、その眼の美しさには、わたしはおもわず、このひとはいったい何の罪でこんなところへ坐っているのでしょうかと案内の方に尋ねました。教誨師のひとは、放火でここへ来ているのですけれど、もう一ヶ月もすれば出られるひとだと教えてくれました。