Japanische Klassiker mit Furigana
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りゅうえいひろくかつえぐら
柳営秘録かつえ蔵
国枝 史郎
Lesen Sie 柳営秘録かつえ蔵 (りゅうえいひろくかつえぐら) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.933 Zeichen · 27 Bildschirme
ある夜ギイーとその戸が開いた。誰か蔵へ入れられたらしい。他ならぬお杉の局であった。と、ドーンと戸が閉じた。蔵の中は暗かった。
燈火一つ点されていない。それこそ文字通りの闇であった。一枚の円座と一脚の脇息、あるものと云えばそれだけであった。
お杉は円座へ端座した。
恋人力石三之丞、その人のことばかり思い詰めた。
「三之丞様」と心の中で云った。
「どうぞご安心下さいまし。お杉は貴郎を忘れはしません。妾は喜こんで貴郎のために、かつえ死にするつもりでございます。思う心を貫いて、自分で死ぬという事は、何という嬉しいことでしょう。……」
蔵の外では夜が明けた。しかし蔵の中は夜であった。蔵の外では日が暮れた。蔵の中には変化がない。こうして時が経って行った。
お杉の心は朦朧となった。
ほとんど餓が極まった。
その時突然お杉が云った。
「妾には解る、貴男のお姿が! おお直ぐそこにお在でなさる。……ああ直ぐにも手が届きそうだ。……左様ならよ、三之丞様! 妾は死んで参ります。……妾は信じて疑いません。こんなに焦れている私達、一緒になれないでどうしましょう。美しい黄泉で、魂と魂と……」