Japanische Klassiker mit Furigana
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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
Lesen Sie 栄蔵の死 (えいぞうのし) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.295 Zeichen · 77 Bildschirme
嫁の実家、又は養子の実家のいいと云う事は、なかなか馬鹿に出来ないものだのに、フラフラと出来心でこんな事をして、揚句は、見越しのつかない病気になんかかかられて、食い込まれる……
お君が半紙をバリバリと裂いた音に、お金の考えが途中で消えた様になって仕舞った。
アア、アア
とけったるそうな、生欠伸をして、
「さあ御晩のしたくだ、
この頃の水道の冷たさは、床の中では分らないねえ。
と云って、ボトボトと立ちあがった。
「ほんにすまん事、
堪仁しとくれやす。
と云いながら「いやになり申候」と書き切って頭をあげると、すっかり知らない間に陰が濃くなって、部屋の隅のものは只うす黒く浮いて見えるほどになって居た。
小窓からも、縁側からも入った奥に居る自分の近所は、気がつけばつくほど暗くて、よくまあ、これで物が書いて居られたと思うほどであった。
狭い狭い台所で、水のはねる音を小うるさくききながら、夫や舅の戻らないうちにと、筆の先に視力を集めて、はかの行かない筆を運ばせた。
一枚半ほどの手紙を書き終った時、パット世界が変るほど美くしい色に電気がついた。
大きな字で濃く薄くのたくった見っともない手紙を、硯のわきに長く散らばしたまま、お君は偉く疲れた気持で、ストンと仰向になった。