Japanische Klassiker mit Furigana
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つちのなかからのはなし
桜の森の満開の下
Lesen Sie 桜の森の満開の下 (つちのなかからのはなし) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 76.558 Zeichen · 153 Bildschirme
たりしたあげくには、麻油に縋りついて到頭めそめそ泣き出してしまって、
「俺だけは忘れないようにしてくれ。俺はもう自分のれっきとした身体さえ、手で触れてみても実在するようには呑み込めない頼りない人間だ。この気の毒な可哀そうな俺だけは忘れないように、頼む、お願いだ……」
と悲しい声を張りあげて、断末魔のように身体を顫わせて掻口説いていた。その痴川を麻油は母親のように抱いてやって、けたたましく笑い出したが、
「いいのいいの。大丈夫よ。貴方の顔は忘れっこないわ。だって、とても風変りなんだもの……」
麻油は又一しきり哄笑して、もう文句も云えずに麻油の腕の中でふんふん頷いてばかりいる痴川を一層強く抱きしめ、優しく頬ずりして汚い泪を拭いてやった。
(昭和8年『文芸春秋』2)