Japanische Klassiker mit Furigana
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つちのなかからのはなし
桜の森の満開の下
Lesen Sie 桜の森の満開の下 (つちのなかからのはなし) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 76.558 Zeichen · 153 Bildschirme
腰骨の痛みも打忘れて、訪客は麓をさして逃げ帰った。
ある年、行暮れた旅人が、破れほうけた草庵を認めて立入り、旅寝の夢をむすんだ。
すでに棲む人の姿はなく、壁は落ち、羽目板は外れて、夜風は身に沁みて吹き渡り、床の隙間に雑草がのびて、風吹くたびにその首をふった。
深更、旅人はふとわが耳を疑りながら、目を覚した。その居る場所にすぐ近く、人々のざわめきの声がするのであった。それは遠くひろびろと笑いどよめく音にもきこえ、またすぐ近くあまたの人が声を殺して笑いさざめく音にもきこえた。
旅人は音する方へにじり寄った。壁の孔を手探りにして、ひそかに覗いた。そうして、そこに、わが眼を疑る光景を見た。
そこは広大な伽藍であった。どのあたりから射してくる光とも分らないが、幽かに漂う明るさによっては、奥の深さ、天井の高さが、どの程度とも知りようがない。さて、広大な伽藍いっぱい、無数の小坊主が膝つき交えて蠢いていた。ひとりは人の袖をひき、ひとりはわが口を両手に抑え、ひとりは己れの頭をたたき、またひとりは脾腹を抑え、百態の限りをつくして、ののしり、笑いさざめいていた。
やがて最も奥手の方に、ひとりの小坊主が立ち上った。