Japanische Klassiker mit Furigana
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つちのなかからのはなし
桜の森の満開の下
Lesen Sie 桜の森の満開の下 (つちのなかからのはなし) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 76.558 Zeichen · 153 Bildschirme
其処から仰ぐと三階の小笠原の部屋に明りが射していたので在宅と判じられたが、うっかりすると不在の孤踏夫人は此辺にいるかも知れないと思われたので、ひどく二人に悪いような気のひけた思いが乱れ、ぼんやりと街灯の下に佇んでいたが、光のあるところでは何かの拍子に顔を見付けられても困るような不安もしてきて、今度はとある暗がりの土塀へ近寄った。闇の中にぼんやりして三階の窓から洩れる薄い光芒を眺めていたら、やにわに水のような静かなものが流れてきて人を懐しむひたむきな心で油然と溢れてしまい、なんだかわけが分らなくなって二足三足するうちに、小っちゃい門灯に寒々と照らし出された石の戸口をそっと押して身体が内側へ這入ってしまった。石の廊下をコツコツ鳴らす跫音が際立たしく顳へ飛び込んできて、その静かさがむやみに神経を刺戟したが、時に何処からとも知れない光が階段の途中あたりで顔に流れかかってきて、だんだん気が遠くなるようであった。
部屋の扉をノックして、「いるかい? ……」と言うと、胸がめきめきするほど不安になりだしたくせに、中から返事もない瞬間にもう戸を押してしまっていた。