Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

もりのえ

森の絵

寺田 寅彦

Lesen Sie 森の絵 (もりのえ) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.921 Zeichen · 4 Bildschirme

Aozora Bunko

家へ帰って夕飯の膳についても絵の事が心をはなれぬ。黄昏に袖無を羽織って母上と裏の垣で寒竹筍を抜きながらも絵の事を思っていた。薄暗いランプの光で寒竹の皮をむきながら美しい絵を思い浮べて、淋しい母の横顔を見ていたら急に心細いような気が胸に吹き入って睫毛に涙がにじんだ。何故泣くかと母に聞かれてなお悲しかった。そんなに欲しくば買って上げる。男のくせにそんな事ではと諭されて更にしゃくり上げた。母は虫抑えの薬を取り出して呑ませてくれたがあの時の自分の心は今でも説明は出来ぬ。幼く片親の手一つで育ってあまり豊かでない生活が朧げに胸にしみ浮世の木枯しはもう周囲に迫っていたから、何かの刺戟はすぐに訳のわからぬ悲しみを誘うたのだ。

あくる日銭を貰うて先ず学校へ行ったが、教場でも時々絵の事に心を奪われ、先生に何か聞かれても何を聞かれたか分らぬような事もあった。放課のベルを待ち兼ねて学校を飛出し、信さんに教わった新店を尋ねたら、すぐにわかった。店へはいると一面に吊した絵のニスの香に酔うてしまう。あれも好い。これも気に入った。鍛冶屋の煙突から吹き出る真赤な焔が黒い樹に映えて遠い森の上に青い月が出ている絵も欲しかったが、何となく静かなこの「森の絵」