Japanische Klassiker mit Furigana
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かんおけのはなよめ
棺桶の花嫁
海野 十三
Lesen Sie 棺桶の花嫁 (かんおけのはなよめ) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.845 Zeichen · 86 Bildschirme
「――さあ行こう、ミチミ」
男はそういって、杜に当てつけがましく、ミチミを抱かんばかりにして、焼け橋梁の上を浅草側に向って立ち去るのであった。
「ミチミ――」
杜は魂をあずけた少女ミチミの名を、もう一度声に出す元気もなくなって、わずかに口のなかでそう叫んだ。いやいや、おお愛するミチミ、私の魂であるミチミ! という呼び方も、いまは自分だけのものではなくなったらしい。あの颯爽たる青年、見るからに文化教育をうけたらしいスッキリした東京ッ児――それが百年も前からミチミを恋人にしていたような態度で「ミチミ、ミチミ!」と呼んでいるのだった。ああ万事休す矣。また何という深刻な宿命なのだろう。お千と自分との無様な色模様を見せたのも宿命なら、いまさらこんなところでミチミに会ったのも宿命だった。
ミチミは頬を膨らまし、背中を向けて向うへいってしまった。杜には、あれがいつものミチミなのだろうかと疑ったほど、彼女の身体はあかの他人のように見えた。お互に理解し合うことはありながら、こうなっては、たとえ何から何までうちあけても、その一部とて信用されないかもしれない。それほど致命的なこの場の破局だった。