Japanische Klassiker mit Furigana
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しいのき
椎の木
豊島 与志雄
Lesen Sie 椎の木 (しいのき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.870 Zeichen · 52 Bildschirme
絶望のあまり、今迄の生活も無駄だったように考えまして、朝鮮からもってきたこの拳銃で、自殺しようと思いました。その決心の最中に、たまらなく淋しくなりました。笑って下さい。どうせ死ぬなら、茂樹の手にかかって死にたいと、それが最後の希望になりました。刑務所内で、茂樹にも一度逢いたいと考えたのと、同じ気持でした。母親……前の妻……のことは、殆んど心にかかりませんでした。ただ、茂樹のことだけでした。血のつながりというものは、恐ろしいものです。とてもこのまま一人では死ねないと考えまして、この拳銃はあなたにお預け致します。一目でもよろしいですから、茂樹に逢えるまでは預っておいて下さいませんか。そうしないと、私は自殺ではなく、ほかに何か恐ろしいことを仕出来しそうな気が致します。」
僕はそこに、常識とか理性とかをのりこして、最後のところまで押しつめられた魂を見てとった。決して手段や策略はなかった。心からの欲求なんだ。一歩の差で、どんな善行にもどんな悪行にもなりそうな堺目なんだ。そして顔には、或る云い知れぬ輝きがあった。僕はそれに逆らわないで、拳銃を預ることにした。