Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しいのき

椎の木

豊島 与志雄

Lesen Sie 椎の木 (しいのき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.870 Zeichen · 52 Bildschirme

Aozora Bunko

それと共に、もし小鈴との愛がなかったら、川村さんは竹山の事件をどう感ずるだろうかと、考えてみるのだった。やはり川村さんも、自分の現状を超越した心境にはなり得ないのであろう。川村さんと小鈴との関係を新たに見直さなければならないと、良一は思うのだった。

ただ、良一が安心したことには、皆でこれから椎の木に別れを告げに行こうと、川村さんは云いだした。竹山茂樹の憎しみの幻影がこわれると共に、原野権太郎の幻影もこわれてしまったらしい。川村さんはしみじみと云うのだった。

「椎の木などは、実はどうでもいいのだ。竹山があんまりこだわるものだから、僕もつい変な気になったが、自然の美は、個人で所有すべきものじゃないだろう。」

川村さんも小鈴も良一も、自動車の中では無言だった。椎の木の下へ、木戸をあけてはいっていっても、誰も余り口をきかなかった。日は西に傾いて、椎の木の影が崖下に長くのびていた。昔は田園だった低地の家根並の彼方、田端一帯の高台は、正面に日光を受けて、明るく暖く輝いていたが、椎の木の下はとっぷりと影になって、ほろろ寒かった。良一はその椎の木をさほど立派だとも思わなかった。