Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ごくらく

極楽

菊池 寛

Lesen Sie 極楽 (ごくらく) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.532 Zeichen · 14 Bildschirme

Aozora Bunko

百年か千年か、坐り続けたら、何処か別の所へ行けるのではないかしら。」

もう、何十年振かにおかんは、そんな疑問を宗兵衛に訊いて見た。その宗兵衛の顔さえ、年が年中五寸と離れない所にあるので、此頃は何となく鼻に付きかけて居る。

「くどい! 何時までも、何時までもじゃ。」と、宗兵衛は何十年前に云った答を繰り返した。

ものうい倦怠が、おかんの心を襲い始めた。娑婆に居る時は、信心の心さえ堅ければ、未来は極楽浄土へ生れられるのだと思うと、一日々々が何となく楽しみであった。あの死際に、可愛い孫女の泣き声を聞いた時でも、お浄土の事を一心に念じて居ると、あの悲しそうな泣き声までが、いみじいお経か何かのように聞えて居た。娑婆から極楽へ来る迄の、あの気味の悪い、薄闇の中を通る時でさえ、未来の楽しみを思うと、一刻でさえ足を止めたことはなかった。あんな単調な長い/\道を辿った時でも、心だけは少しも退屈しなかった。不退転の精神が、心の裡に燃えて居た。ところが、その肝心の極楽へ来て見ると、如何にも苦も悲しみもない、老病生死の厄もない。平穏な無事な生活が、永遠に続いて行くのである。