Japanische Klassiker mit Furigana
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ごくらく
極楽
菊池 寛
Lesen Sie 極楽 (ごくらく) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.532 Zeichen · 14 Bildschirme
彼女は、口に『南無阿弥陀仏々々』と、繰り返しながら、一心不乱に辿った。長い/\道であった。それと同じように、長い/\時であった。薄闇の中には、夜も昼もなかった。気が付かない中に、幾何歩いて居たのか、分らなかった。気が付いてからも幾何歩いたかも知れなかった。距離で計ることも出来なかった。時で計ることは尚更出来なかった。たゞ一生懸命に、長く長く歩いたと云う記憶だけがあった。不思議に足も腰も疲れなかった。現世に生きて居た頃には、お西様へ往復して帰ると家の敷居を跨ぐのにさえ、骨が折れたほどだった。が、今では不思議に、足も腰も痛くない。
幾何歩いたかも、丸切り見当が立たなくなってしまった。たゞぼんやりと、生きて居た頃の時間に引き直せば、十日かそれとも半月も歩いたかも知れないと思った。不思議に少しも空腹を感じなかった。幾何歩いても、足も痛まなければお腹も空かなかった。従って、そう云う事に依って歩いた道程を計る訳にも行かなかった。たゞ薄闇の中を、前途の薄明を頼りにして、必死に辿るより外には、仕様がなかった。
何等の区劃もなく無限に続いて居る時と道とを、おかんは必死に懸命に辿り続けるだけであったが、どんなに道が長く続いても、勇ましく進むことが出来た。