Japanische Klassiker mit Furigana
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ごくらく
極楽
菊池 寛
Lesen Sie 極楽 (ごくらく) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.532 Zeichen · 14 Bildschirme
何処を見ても燦然たる光明が満ち満ちて居る。空からは縹緲たる天楽が、不断に聞えて来る。おかんは、恍然としてそうした風物の中に、浸り切って居た。楽しい日が続いた。暑さも寒さも感じなかった。色食の慾もなかった。百八の煩悩は、夢のように、心の中から消えて居た。極楽の空がほがらかに澄んで居るように、心の中も朗らかに澄んで居た。
「ほんとうに極楽じゃ。針で突いたほどの苦しみもない。」と、おかんは宗兵衛の方を顧みて云った。が、宗兵衛は不思議に何とも答えなかった。
同じような日が毎日々々続いた。毎日々々春のような光が、空に溢れて居る。澄み渡った空を、孔雀や舎利が、美しい翼を拡げて舞い遊んで居る。娑婆のように悲しみも苦しみも起らなかった。風も吹かなかった。雨も降らなかった。蓮華の一片が、散るほどの変化も起らなかった。おかんの心の中の目算では、五年ばかりも蓮の台に坐って居ただろう。「何時まで坐るんじゃろ。何時まで坐っとるんじゃろ。」と、おかんは或日ふと宗兵衛に訊いて見た。それを聴くと宗兵衛は一寸苦い顔をした。「何時までも、何時までもじゃ。」と、宗兵衛は吐き出すように云った。