Japanische Klassiker mit Furigana
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えのきものがたり
榎物語
山本 周五郎
Lesen Sie 榎物語 (えのきものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.519 Zeichen · 67 Bildschirme
「まだ会えないのね」
「生死もわからないのよ」とはつが云った、「でもあの人は生きている、いつか必ず会えるって、おすげちゃんは信心するように思い込んでるの、それはいじらしいくらいよ」
あたしもそうなのだ、とさわは心の中で云った。あたしがこんな生活をしているのも、いつかあの人が来てくれる、きっと迎えに来てくれると信じているからだ、と自分を慥かめるように心の中で呟いた。
「それでね、こんな宿屋にいるより、あなたのところに置いてもらいたいというの」はつは続けていた、「陽のあるうちは、あなた大榎のところで茶店、じゃないわね、茶をたてて売ってるでしょ、往来する人はよく見えるし、捜してる人にも眼につくわ」
「だってあたし独りでもやっとのくらしよ、こうやって宿屋さんへ呼ばれるようにはなったけれど、それだって人を雇ったりするような稼ぎはありゃあしないわ」
おはつは手を振った、「そうじゃないの、お金なんて一文もいらないの、陽のあるうちだけあなたのところにいて、あとはこれまでどおりこのうちで働くのよ、つまりさ、往来の人のあるうちだけ、あなたの側に置いてもらえばいいんですって」