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Japanische Klassiker mit Furigana

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えのきものがたり

榎物語

山本 周五郎

Lesen Sie 榎物語 (えのきものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.519 Zeichen · 67 Bildschirme

Aozora Bunko

どんな状態の中でも、一と眼でお互いがわかるものだ。さわはその事実を自分の眼で見た。人の話や物語にあることが、現実にもちゃんと存在するのだ。あの二人の約束は、自分と国吉のそれより深刻なものではない、自分と国吉とは少年であり少女であるころから、同じ屋敷の中でくらし、まわりの人たちに疎まれるという、似たような孤独感によってしだいにひきつけられ、そうして将来を誓ったのである。石にかじりついても人並に出世してみせる、それまで待っていてくれますか。待っています、五年でも十年でも、一生涯でもあなたを待っています。あれは言葉だけではなく、お互いが心の底から誓いあったのだ。迷ってはいけない、あの人はきっと来てくれる、あたしはその日を待っていればいいのだ、とさわは改めて自分に云いきかせるのであった。

さわは二十五になり二十六になった。冬のあいだの寺子屋のような仕事に加えて、小出の宿へ茶の指南にも招かれるようになり、住居には小女を置いて雑用を任せながら、季節には飽きずに茶の野だてを続けた。長いあいだのことだから、しぜん街道の評判になって、野だての席へは寄らなくとも、宿屋から呼んでくれる客も多くなり、参覲のため小出へ泊る大名にも幾たびか接待をした。