Japanische Klassiker mit Furigana
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えのきものがたり
榎物語
山本 周五郎
Lesen Sie 榎物語 (えのきものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.519 Zeichen · 67 Bildschirme
「どうしてまたあなたは、このあたしをその人だと思ったのです、人の話でも聞いたんですか」
「いいえ」足助は首を振った、「この大榎でひょっと思いだしたのです、これは河見さまのお屋敷の中にあったものですからね、その下で茶の接待をしているとすれば、おさわさんに相違ないと思いこんじまったんです」
このまえには、遠くから見ただけだったが、急にまたそのことが気になりだし、暇ができたので慥かめに来たのだ、と足助は気ぬけのしたような口ぶりで云った。さわはもう聞いてはいなかった。国吉と佐平とが同一の男であり、自分と二度か三度会ったという。それが事実かどうか、いつごろのことか知りたいと思った。そんなことがあろうとは信じられない、足助が誰かに騙されているか、とし老いて頭がどうかしてしまったのではないか。そう疑ってみるあとから、真実らしい、という感じが増してゆくようであった。
「もし事実だとしたら」とさわは自分に問いかけた、「それはどういうことだろう、あたしはどうしたらいいのだろう」
まず事実かどうかを慥かめることだ、とさわは心をきめた。足助が去り、道具を片づけて家へ運び終ると、その足でさわは角庄へいった。