Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme

Aozora Bunko

「率直にうかがいます」と彼は云った、「一つは離婚の件、一つは加増の件です」

「手短かにたのむ」

「まず離婚についてうかがいましょう、どうして御内室を離別されたのですか」

「それはむずかしいな」

「だめですか」

「だめということはないが、夫婦のあいだのことを他人に話すのはむずかしい、むずかしいばかりでなく、他人には理解のつかないことがある」

「たとえば」

「そう、たとえば躰質だ」と甲斐は静かに云った、「気性の差は辛抱できないこともない、よくわからないが、気性の違いなら、或る程度まで折りあってゆけると思う、しかし躰質の違い、それも健康のよしあしではなく、夫婦としての日常生活を支配する点で、その差があまりに大きいと折りあうことができなくなる」

「もう少しはっきりうかがえませんか」

「はっきり云う必要があるのか」

「茂庭さんの依頼です」

「律の恥になってもか」

「私は伊東七十郎です」

「では云おう」甲斐は膝の上で両手の指を組み、眼を伏せながら、嘆くような調子で云った、「律は情愛の深い女だった、私はいい妻を娶ったと思った、事実そのとおりだったのだが、月日が経つにしたがって、その情愛がますます深く、根づよくなるばかりだった、単に自分がそうであるうちはまだよかったが、やがて私にも同じような情愛を求め、それが満たされないといって、嫉妬したり悩ん