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Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme

Aozora Bunko

「その顔は見たことがあるな」

甲斐はしずかに低頭し、二度おめにかかっている、と云った。

「いちどは、さきの陸奥守に逼塞のお沙汰のあったとき、次は亀千代家督の礼に、献上の使者を勤めたとき、前後二度、大城において、おめどおり致しました」

「いやそうではない」と雅楽頭は頭を振った、「殿中のことは覚えている、殿中ではなく、そのほかのどこかで見たように思う」

「面目でございます」と甲斐は穏やかに云った、「私のはどこにでもざらにある顔で、おそらくお眼ちがいでございましょうが、厩橋侯からさようなお言葉をいただくのは、身に過ぎた面目でございます」

「いや、たしかに見た顔だ」と雅楽頭は云った、「それも見たばかりでなく、話したことさえあると思う」

甲斐は微笑しただけであった。

「その額による皺、その眼、口つき、その声までがそっくりだ」

兵部が甲斐を見た。甲斐はまったく平静に、それはますます面目に思うと云い、いささかも動じない眼で、雅楽頭を見ていた。

「では訊くが」雅楽頭はさらに云った、「そのほう八十島主計という者を知っているか」

「八十島、はて、――」

「知らぬ筈はないぞ」雅楽頭は屹と眼を光らせた。