Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
「あたしこうして死にたい」
「おれの云うことを聞いているのか」
「こうして死ねたら本望よ」と抱きついたままおくみが云った。
「わかった、もうよせ」
おくみは首を振り、両手を(すばやく)甲斐の腋へすべりこませた。しかし、おくみが抱き緊めるまえに、甲斐はその手を掴んで向き直り、痛い、と云いながらひき放した。
「そこは傷があるんだ」
おくみは吃驚した。あまり驚いたので、泣いていたのも止まり、涙だらけの顔で、あっけにとられたように、甲斐を見あげた。
甲斐は肌着をひろげ、「くびじろ」の角にかけられた傷痕を見せた。おくみはまあ、といって、いたましそうに眉をひそめながら、顔をそむけた。
「知りませんでしたわ、堪忍して下さい」
「着せてくれ」と甲斐が云った。
おくみは着物を持って、もういちどうしろへまわった。
甲斐が着替えを終ったとき、丹三郎が来客を告げに来た。だめだ、いないといえ、と甲斐は云った。そう申したのですが、と丹三郎は当惑げに云った。ここへおはいりになるのを見届けたと申しております。なに者だ、と甲斐が訊いた。
「浪人ふうの者で、姓名は御前で申上げるといっております」