Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
を連想して、帰国以来、まだ麹屋又左衛門に会っていないことを思いだした。
「怒っていらっしゃいますの」
「許しを得て来たのか」と甲斐が訊いた。律は黙ってうなだれた。
「佐月さまにも無断か」
「願っても許して下さらないのですもの、黙って出て来るよりしかたがございませんでしたわ」
「なぜ許しが出ないか、わかるか」と甲斐が訊いた。
律はゆっくりと頭を横に振った、「それをうかがいたくて、出てまいったのですわ」
「私からは話せない」と甲斐が云った。
「なぜでございます」
「話せないのだ」
「わたくしうかがわずにはいませんわ」と律は眼をあげた。
甲斐は顔をそむけた。妻の眼を避けたのでもなく、嫌悪でも怒りでもない。まったく無関心で、なんの感情もなく、漫然と顔をそむけたのであった。それが律を絶望させた。
「あなたはわたくしを離別なさるおつもりですのね」
甲斐は答えなかった。
「お返辞がないのはそうなのでしょう、そうなのでしょう、あなた、わたくしを離別なさるおつもりなのでしょう」
「声が高すぎるぞ」
「仰しゃって下さい、なぜなのですか」
「その話しはできない」
「わたくしにはおよそ察しがつきます」