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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 117.781 Zeichen · 235 Bildschirme

Aozora Bunko

「お内儀さんにご用でしたら、帳場の方におまわり下さいね。」

と、いやに「ね」に力をいれ、ここはお前さんたちの出はいりするところではありませんよ、と言わぬばかりの冷たい調子でこたえ、そのまま雑巾をバケツの中でざぶざぶ洗い出した。

俊亮が、当惑したような顔をして、

「帳場の方は、どこから這入るんかね。」

と、玄関の横の格子窓に眼をやりながら、たずねると、

「門を出て左っ側ですよ。」

と、女はもう雑巾を廊下にひろげて、四つんばいになっていた。

俊亮は、苦笑しながら、門を出た。次郎もそのあとについて行ったが、何かを蹴とばしたいような、それでいて心細いような気持だった。

帳場の入口は、路地をちょっと曲ったところにあった。戸は開けっ放しになっていたが、中にはいると、なまぐさい匂いがむっと鼻をついた。

森閑としてどこにも人気がない。蠅が一しきり大鍋の上にまい立ったが、またすぐ静かになった。

「ごめん!」

俊亮が、奥の方に向かって大声でどなると、

「だあれ。」

と、少し甘ったるい声がして、十四五の女の子が、これも白い襦袢と赤い湯巻だけで出て来た。頸から上に濃く白粉をぬったのが、まだらにはげている。