Japanische Klassiker mit Furigana
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しのぜんご
死の前後
豊島 与志雄
Lesen Sie 死の前後 (しのぜんご) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.273 Zeichen · 35 Bildschirme
蔦子はいろんなとりとめもない話をしながら、杯をかさねた。おしげは殆んど口を利かないで、うなずいてるきりだったが、嬉しそうだった。蔦子の家から電話がかかってきた。蔦子は料理の折詰とお酒の瓶とを包んで、おしげにむりに持たしてやった。御主人にわけを話して、うちでゆっくりおあがりなさいと云った。おしげは帯のところをつっついて、通帳を落さないようにと、何度も注意した。蔦子は子供にでも対するようにうなずいてみせた。
蔦子は家に帰って、鏡台の前に坐ったが、ふいに、何か腹だたしいかのように、かかってきてるお座敷を断らせた。そして鏡の中をぼんやり眺めながら、煙草を吸いながら、考えこんでしまった。
おしげの郵便貯金のこと、彼女の急死のこと、蔦子がその貯金によって救われたこと、それらの話を蔦子から聞かされた時、坪井は心に復雑な衝撃を受けたのだった。それらの話をしながら蔦子は、絶望的とも云えるような朗らかさを示していたが、聞く方の坪井は、次第に憂欝な気分に沈んでいった。
彼はその憂欝の底から、蔦子と知り合った初めのこと、なおそのも一つ前のことを、まざまざと思い浮べるのだった。